2020.10.19

ブックレットの感想集『不便視点』

 リベルのブックレット『不便視点 〜益が見つかるもう一つの方向〜』に関して投稿いただいた感想です。

いちせさん(2020年10月18日)
 不便=害、便利=益であると思っていた(思考停止していた)が、不便にも「益」はあり便利にも「害」があると気付くことができた。
 特に面白かったのが、「便利」は経済的価値の追求=欲望の追求と紐付いている、ということだ。欲望とは幸せを求めることだが、欲望には際限がない。しかし、幸せ=変化の総量なので、便利方向に振れた欲望を、不便方向に揺り戻すことで、再度変化を感じることができ、幸せになれるのではないかと思った。
 便利のみならず不便にも「益」があると知っていれば、便利過ぎる世の中で不便による価値、人間的価値を見いだせるのではないかと思った。
 分量コンパクトですが、非常に濃密で面白い本でした。不便の価値を考えることは、AI時代における「人間らしさ」を考える良いきっかけになりました。また参加したいです!

kuboさん(2020年10月18日)
 今日は読書会、ありがとうございました。とても楽しかったです。
 この本は読み進むほどに、便利と益が一致しない状態からこそ見えてくる、益(生きる上で幸福感や豊かさ)とは何か?という問いを深く突きつけられる思いがしました。人間は何に益を感じる生き物なのか。
・労力があまりに大きい場合、それを取り除く「便利」も益の一つ
・自分の労力で物事を望む方向に良くできているという「自己効力感」
・他人や、あらゆるものと関り、助け助けられ生きている「共生感」
まだあるかもしれませんが、このあたりは、この本や、読書会の皆さんのお話からもはっきりと共有できる「益」のあり方かなと感じました。これは人類史に基づいた前回の短篇本の内容とも繋がりそうです。
 本の中で「表タスク」(人が行動の目的としている益)と「裏タスク」(行動の結果、副次的に達成している益)という分類が面白かったのですが話題にしそびれたので少し。私は、ここで言う「表タスク・裏タスク」にはもう一つ思考的・非思考的という傾向があるように感じました(ざっくり思考的=単一/自覚/理的、非思考的=複数同時/無自覚/情的)。人間一人一人には本来自らの労力を無自覚的にも上に挙げたような益に変えていく力(人間性)が備わっていて、この「裏タスク」が年月をかけて生活の隅々に豊富に絡み付いているのが、人にとっての幸福な状態なのではないか。ちょっと安易な例えですが、海外の古い集落のおじいさんの一日を淡々と追ったドキュメンタリーのようなものを見て多くの人が「いいな」と思うのは、(実際にはとても不便で辛い部分もあるとしても)本人も全ては自覚していないかもしれない無数の裏タスクの絡みつきが、第三者目線だとよく見える、そんな風に表現できるのではないかと思います。
 自分の仕事のデザイン的な側面について考えると、使い手の無数の裏タスク全てをデザインの対象として考え切ることはできない。できることがあるとすれば、使い手の自然な人間性の発露を妨げない環境を整えること、なのではないかと日々考えています。そんな中で人間の成り立ち、性質について思い巡らす吉田さんの前回・今回の短編本のテーマは、とても面白く読ませていただきました。ありがとうございました。


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