2020.12.28

読書会の話。違和感を手にとったり、口に出したりしてみると。(&自己実現の話も)

 一昨日は「いいライフスタイルについて考える」読書会、昨日は読みたい本を気ままに読む読書会でした。一昨日の話はまた改めてお伝えしたいと思っていますので、ここでは昨日の話を少しだけ。

 昨日もいろいろな本を持ってきていただき、感想が共有されました。皮膚感覚の大切さに関する話や、整いすぎているように思われる現代社会に関する話や、資本主義というものについて改めて考えてみる話など。これらは、本のタイトルやテーマだけをみると異なるもののように思えますが、まとめるとするならば今の社会や生活に対して感じる違和感について改めて考えてみるということを一つの起点にしているのではないかと思ったりしています。ですので、一見違う内容なのですが、どこかつながっていって考えを深めたり関心が広がっていったりするのだと思います。
 そして、違和感に向き合うように手にとった本を読んで感想を口に出してみることは、実はとても重要なことなのではないかと思いました。そう思ったのは、ある参加者の方の読書感想で、こんなことがシェアされたからです。後からもらった読書感想の内容を引用して紹介します。
「現代の秩序に引っかかりがある人が、引っかかりを持ちながら生き、心の中で舌を出していても構わない社会であって欲しい。そしてたまたまディスカッションできた者同士で交わされた言葉を残していくことが、現状に対するささやかな抵抗ではないか」(熊代享著『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』[1]の読書感想より) 
 「言葉を残していくこと」というところが特に印象的でした。言葉を残す手段は、話す以外にも書くことなどもあると思いますが、そうすることで自分の意識の中により残りやすくなるのだと思います。意識に残れば、それに関連することに注意が働きやすく、自分なりに深めたり広げたりできやすくなるのではないかと思います。また同時に、言葉を残せばそれを目にしたり耳にしたりする人が出てくるので、その人にとっても意味のあるものになると思います。誰かから発信された言葉によって、自分自身の違和感に気付けたり、あるいは反対意見を抱いたとしたら反対であるという自分の立場や考えが明らかになるからです。人それぞれ、置かれている状況や持っている価値観などが異なりますが、言葉を残すことで相補的に自分なりの考えやものの見方が培われていくのではないかと思ったりしました。

 さて、私自身は引き続きマズロー氏の『人間性の心理学』[2]を読んでいました。改めて、どんな違和感を持ってこの本を手にとったのかと考えてみると、それは自己実現というものに対する違和感があって手にとったのではないかと思っています。自己実現に違和感があるとは言っても、それは自分の中の先入観に近い解釈の話だったので、本家本元の考えをきちんと聞いてみようというきっかけです。
 個人的には、自己実現や、やりたいことをやるということにはとても関心が高くありましたし、今でも自分自身そういう状態にありたいと思っています。しかしながら、そうしたものを目的や目標として抱えすぎていると、ストレスに感じてしまったり、それが見つかっていない状態に対して否定的になってしまったりするように感じました。つまり、いい人生を送りたいと思って目指し始めた自己実現に逆に縛られて、あまりいいと思える生活が送れなくなることもあるのではないかという違和感です。
 このような違和感に対する一つのヒントとなったのは、自分で事業を興している人たちに聞いた話でした。外からみていると、自分で事業を興している人たちは、明確なやりたいことやビジョンのようなものを持っているように思えます。しかし、話を聞いていると、明確に言えるものばかりではなく、漠然として抱いているものを少しずつ言葉にしているように感じました。事業とはそれを少しずつ形にしていっている、あくまでも“その時点での”具体化なのではないかと思いました。つまり、やりたいこととは、それほど明確な形として持てるものではなく、方向性や価値観の表れのような、もっと漠然としたものなのではないかということです。もっと言うと、見つかること自体よりも、それを見つけたり具体化したりしていく過程自体が人を活気づけるのであり、自己実現と言えるような状態なのではないかと感じました。
 そのような前口上を踏まえながらマズロー氏の本を読んでいますが、自己実現とは、何か目的を持って実現に邁進している状態などとは書かれていないようです。つまり、やりたいことをやることがマズロー氏のいう自己実現ではないようなのです。これまで読んだところには、このような内容がありました。羅列になってしまいますが少しだけ紹介します。
「自己実現は、既に有機体の内部にあるもの、もっと正確に言えば、有機体それ自体であるところのものの本質的な成長なのである。」[1,P198]
「自己実現は、欠乏に動機づけられたものではなく、成長に動機づけられたものである。」[1,P199]
「自己実現とは文字どおり自己を実現することであり、そこでは二人の自己が全く同じであるということはありえない」[1,P270]
 解釈を交えてまとめみると、自己実現とは、自分の中にある興味関心や得意なことや能力などが、日々の活動の中に表現されており、そういった状況に自分自身が動機づけられ成長を求めている状態であると言えるのではないかと思います。つまり、やりたいことのようなものを実現することが自己実現なのではなく、そういった活動を手段として自分自身を表現でき成長を目指そうと思えている状態が自己実現なのではないかということです。何らかの明確な結果や目的などよりも、それらを見つけたり少しずつでも鮮明にしようと思える過程の中に自己実現があり、その方向性が唯一無二の存在とも言える自分の性格や能力にフィットしているほど、自己実現的な満足は得られやすくなるということだと解釈しました。
 もう少し踏みこんで言うと、やりたいことが明確に見つかっているかどうかは、あまり重要ではないのではないかと思います。具体的な何かを求めすぎるがあまり、焦って決めすぎて、合わない感じを補正できないまま進んでしまうことの方がもったいないことだとも思います。いろいろなことを試しながら、次はこうしてみようかなと思えていることが大事なのであり、そう思えていれば、やっていることの明確さがたとえ低いと思われても、さほど問題ではないのかもしれません。

 さらに、別の視点として、ユング心理学の「内向-外向」[3]という人間の類型を考慮するならば、自己実現における自己というものが、自分の中に形成されていくのか、自分と周囲の間に形成されていくのかは、人によって異なると言えると考えられます。
 内向的とは、関心が内界の主観的な部分に重きを置かれていることを言います。それに対して外向的とは、関心や興味が外界の人や物事に向けられ、それらとの関係や依存によって特徴付けられていることを言います。外向的な人は一般的に、社交的で、多くのことに興味をもち、交友関係も広い傾向にあるのだそうです。それに対して内向的な人は、新しい場面に入る時にぎこちなさを示すことが多い一方で、他の人を驚かせるような深さを示すことがあるのだそうです。
 これらの内向と外向の特徴を言い換えるならば、内向的な人は関心の起点が内にあり、内の中で方向性や価値観のようなものが培われていくと言えるのかもしれません。それに対して外向的な人は、関心が外に向けられていて、外との関わりの中で方向性や価値観のようなものが培われていくと言えるのかもしれません。つまり人のタイプによって、自己実現の自己というものが、どの程度自分の中で形成されていくと言えるのかは、異なってくるのではないかということです。決して、自分で考えなきゃとか自分で見つけなきゃというふうに、囚われる必要もないのだと考えられます。
 自己実現という強めの言葉とは裏腹に、自己実現とは、自分が内的に動機付けられていてもっとこの方向で成長していきたいと思えている状態を示す、あいまいさをはらんだ概念のようです。日々の生活の中で少しずつ近づいていけるもののように思われ、あまりはっきりと目指すものではないのかもしれません。健康診断的に、たまに照らし合わせてみる対象というようなイメージでしょうか。

 読書会では、いろいろな方の話に触れて深めたいと思える関心やテーマが広がっていきます。何か結論が出なければ前に進んではいけないわけでもないと思うので、得たことを生活の中で試しながら、自分なりのいい毎日を送れるようになればと思っています。年明けの読書会の予定はまだ決められていませんが、今年と同じようにほぼ毎週の土日に行いたいと思っています。それでは、良いお年を。


〈参考図書〉
1.熊代享著『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』(イーストプレス)
2.A.H.マズロー著/小口忠彦訳『人間性の心理学』(産業能率大学出版部)
3.河合隼雄著『ユング心理学入門』(培風館)

〈読書会について〉
 読書会の情報については、FacebookページやPeatixをご覧ください。申込みをせずに直接訪れていただいても結構です。ただ、たまに休むこともありますので、日程だけはご確認いただければと思います。
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 読書会の形式や最近の様子については、こちらに少し詳しく書いています。

(吉田)

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