2020.12.20

読書会の話。ロジカルシンキングと意思決定。

 昨日は読みたい本を気ままに読む読書会、今日は「いいライフスタイルについて考える」読書会でした。今日の話はまた改めてお伝えしたいと思っていますので、ここでは昨日の話を少しだけ。昨日はいくつかに話題が出ましたが、ロジカルシンキングの話題が印象的だったので、振り返ってみたいと思います。

 参加者の一人が読んでいたのは、ロジカルシンキングの方法がイラストを交えて分かりやすくまとめられたものでした。私生活にまつわる事例も使われている、とてもイメージが湧きやすそうな本です。
 読書後の感想のシェアの時間では、ロジカルシンキングの必要性は確認しばがら、でも膨大にある選択肢の中から筋のよいものを見つける能力も必要ですよねという話にもなりました。ロジカルシンキングとは、選択肢を洗い出した上で、情報などをもとに適切な選択肢を絞り込んでいくプロセスなのだと思います。選択肢の洗い出しのときには、漏れなく・だぶりなく行うことが重要とされますが、本当に漏れなく・だぶりなく行うと膨大な選択肢になってしまうことが少なくないのではないでしょうか。それらの全てについて検討を行おうとすると大きな労力と時間がかかるため、大きな組織などが行うにはいいのですが、個人や小さな組織で行うにはあまり現実的ではないのではないかと考えられるということです。したがって、筋のよいものに一定程度絞る能力があるということが、ロジカルシンキングと並んで必要とされてくるのではないかということでした。
 では、筋のよい選択肢への絞り込みをするためには、どうすればいいのでしょうか。とても難しい問題だと思いますが、最近では「センスメイキング」という概念を耳にすることがあります。Wikipediaによると、「人間が経験から意味を与える過程を言う。 想定、予測、期待していないことを、感知した後、評定し判断するプロセスである。」だそうです。やはり経験を重ねるしかないのか、とも思ってしまいますが、概念や論理を説明している本もあるようなので、手にとってみると磨き方や扱い方が分かるのかもしれません。『世界標準の経営理論』(入山章栄著、ダイヤモンド社)では様々な経営理論と共に、センスメイキングについても紹介されているようです。また概念をタイトルそのままにした『センスメイキング ー本当に重要なものを見極める力』(クリスチャン・マスビアウ著、プレジデント社)という本もあるようです。

 また選択のプロセスに関連することとしては、意思決定に感情がどの程度影響しているのかという視点も重要かもしれません。少しだけ紹介させていただきます。
 脳神経学者のアントニオ・ダマシオは、脳腫瘍を手術した患者が知能には問題がないのに意思決定に大きな支障をきたす症例などから、ソマティック・マーカー仮説というものを導きだしました。その患者は論理や理性を司る脳機能には問題が認められませんでした。意思決定とは論理や理性によって成されるものであると考えられていたため、意思決定に影響を及ぼす理由が分からなかったのです。
 しかし一方で、その患者にはある症状がみとめられました。それは、感受性や感情の表れに大きな減退が見られたことです。他にも同様の脳部位の損傷をした患者についても調査を重ねたところ、感情の減衰とともに意思決定に支障をきたすという事例が見つかったのです。
 私たちはおそらく日常生活で様々な意思決定をしていますが、その際に意識的な部分に選択肢が上がってくる前に無意識的な部分で選択肢の絞り込みがされていたり、理性的に意思決定をしているつもりでも実は感情が介入していたり、あるいは意識していないところで無意識的に意思決定をしていたりするのではないかということが、このような仮説から見えてきます。食事の選択や、衣服の選択、旅行先の選択など、生活において選択の機会は無数にあります。このような選択に対してひとつひとつ、本当は何が一番いい選択なのかなどと冷静に考えていたら生活がままなりません。理性ではなく感情、意識ではなく無意識が働くことで、生活が円滑に営まれているのだと考えられるのです。
 そうして成立している生活や社会に意識や理性を持ち込みすぎても、営みに影響が出たりするのかもしれません。どういう場面で理性的な意思決定が有効なのかの判断は、仕事や私生活をうまく営んでいく上で重要であると言えそうです。また、意思決定に感情が介入しているという認識を持っておくことで、理性が求められる場面でより理性的純度の高い意思決定ができるようになるのかもしれません。感情や美意識と意思決定に関しては、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周著、光文社新書)の中の一部で考察されています。意思決定にどれだけ感情が介入するのかに関しては、『意思決定の心理学』(阿部修士、講談社)で様々な研究報告と共に考察されています。

 読書会は来週の土日が年内最後となります。年末年始の休暇に入られている方もいるかもしれませんが、休暇中に読書をしようと考えられている方はその入り口としてもお使いいただければと思います。来週はいつもの朝10時からの読書会に加えて、9時半から年末に読みたい本を共有し合うだけの雑談の時間を開く予定です。


〈読書会について〉
 読書会の情報については、FacebookページやPeatixをご覧ください。申込みをせずに直接訪れていただいても結構です。ただ、たまに休むこともありますので、日程だけはご確認いただければと思います。

Facebookページ
Peatix

 また、リベルの読書会のスタンスはこちらに表しています。
・読書会のスタンス:https://liber.community/about-dokusyokai/

(吉田)

関連するタグ

#思考・創造 #読書会 #選択

このページをシェアする

読書会

 本を読んだり、なにか考えごとをしたり、ゆっくりと使える時間になればと思っています。事前読書のいらない、その場で読んで感想をシェアするスタイルの読書会です。事前申込はあまり求めていませんので、気が向いたときに来てください。

詳しく見る >>