2021.12.29

今年もおつかれさまでした。

読書会をはじめとしたリベルの活動について、今年を振り返りました。いろいろと思うところ考えるところと向き合いながら、来年も変わらず続けていければと思っています。今年もおつかれさまでした。今年のテーマは「対話」だったのかもしれません。

 今年もよく読んで、話して聴いて、ときには書きました。おつかれさまでした。すこし振り返っていきたいと思います。

 読書会では、読みたい本を気ままに読む読書会のほかに、テーマのある読書会も開きました。テーマを羅列すると、「いいライフスタイルについて考える」「人の欲」「無意識」「話すこと」「価値観の色々」「出合いたいもの」です。ほかにも単発で、ミヒャエル・エンデのモモ、資本論(に関係するもの)、京都、など本やテーマをしぼった読書会を開きました。このコンテンツの最後に、読書会の読書感想やまとめコンテンツを掲載していますので、もしよければご覧になってください。
 テーマのある読書会は、ひとつのことについてじっくり考えてみる機会になり、少し試してみたいことが出てきたりします。たとえば、テーマ「話すこと」の読書会では、「対話」について知ることができ、読書会の感想を共有する時間をすこし延ばすきっかけになりました。もちろん、その前から感想の共有の時間が少し急ぎ足だと感じていたり、読書や他の人の感想について咀嚼しきれないという声をもらったりしていました。ただ、感想の時間を長くとると読書の時間が減ることになるので、どうしようかと迷っていたのです。そこへ「対話」という概念がタイムリーに読書会で共有され、本を読んだところいいものに思えたので、感想の時間を延ばしてみることができました。
 対話とは、さまざまな説明のされ方があるのだと思いますが、私なりの理解では、自分の言葉で話すこと、そしてそれをじっと聴くことであると考えています。話し手と聴き手のあいだには双方向性があります。話す人は、聴いてくれる人がいなければ話すことができません。また、聴く人が待ってくれていることで自分の言葉で話すことができるのではないかと思います。そうして自分の言葉で話してもらえると、聴く方もより興味をもって聴くことができ、自分のなかにもなにかが浮かんできて話し手になっていきます。そうして、それぞれの人にとって、その人なりのなにかが残る時間になっていくように感じていました。今後も、読書会が対話的であることには意識をおいて、よりよい時間になれるようにしていきたいと思っています。

 読書会だけではなく、ただ話すだけの時間もいくつか開いてみました。そのなかで今年レギュラー化したのが、「質問「   」について考える時間。」です。これは、田中未知という人がつくった『質問』という本を題材にするものです。『質問』には、1ページに1つの質問が書かれているのですが、その質問がなんとも奥深い、ような気がしてあれこれ考えてしまうのです。
 たとえば印象に残っている質問は、「空に手で触ることができますか」です。質問について考える時間は、だいたい戸惑いから始まります。どこから手をつけていいのかわからない、という戸惑いです。空に手で触ったと思ったことはない、けれども、空とは一体なにのことを言うのだろうか、ということから始まります。自分たちの上に空は広がっているけど、どこからが空というのだろうか。頭上には永遠と空気がつづく、いずれは宇宙に行き着く、でもたぶん私たちが空と言っているのは空気の領域だと思う。だとしたら、手を上げて触れている空気は空といえば空なのではないか。そう捉えると、背の高さが違えば空の高さも違ってくるのではないか、などと話は展開されます。
 この話がどこに行き着くのかというと、特に行き着く先や答えのようなものは、ありません。ただ話の展開のされ方を楽しんだり、変化球な質問に驚いたり、自分のなかで巡る思考に耳をすませたりしています。そんな時間がおよそ30分、ただ過ぎていくのです。さて、本当にこのような時間のあり方でいいのでしょうか。
 また少し「対話」の話に戻りますが、精神科医が用いる対話的な治療法に「オープンダイアローグ」というものがあります。この治療法では、家族・当事者・専門家が集まって、ただ話す・聴くという対話の時間をとります。そしてそんな時間をとるだけで、患者さんは快方に向かっていくというのです。
 この手法では、対話のなかでなんらかの結論や方針を見出すことに目的をおきません。ただ対話の時間そのものをしっかりと過ごすことに目的をおくのだといいます。とはいえ、結論を急がないまでも結論や方針を対話のなかから出すこと自体には一定の意味があると、オープンダイアローグでも考えられているのではないかと勘繰ってしまいます。しかしそうでもないでようなのです。先日の読書会で、最近よく対話に関する本を読んでいるという方にそのような質問をしてみましたが、結論を出すことの明確な意味にはまだ出くわしたことはないという応えでした。それよりも、コミュニケーションのなかに余白があることが大事なのだそうです。
 日常会話では結論などないことが常です。それに対して議論やイベントなどでは結論があることが求められます。「質問「   」について考える時間。」は、日常会話に近いけれども、時間を設けて人に来てもらうことを考えると、ただ過ぎてくだけでいいのかという思いも生まれます。今の雰囲気を変えるつもりはありませんが、対話をヒントに、ただ考えて話して聴くだけの時間について、もうすこし考えを深めてみたいと思っています。ちなみに、読書会の方もいろいろなジャンルの本が持ち寄られるので、言い方は悪いかもしれませんが雑多な時間で、まとまることはあまりありません。となると、リベルで開いている時間は、全体的に対話的な方向を向いていると言えるのかもしれません。

 「質問「   」について考える時間。」は、読書会で『質問』を読んでいる人がいたことをきっかけに始まりました。その人が感想で共有してくれた質問がおもしろかったのです。いくらでも話が続いていきそうだったので始めてみました。ほかにも、NHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』について話す時間も開きました。これは私がハマっていたというのもありますが、読書会の参加者にリクエストをいただいたというのもあります。来年も、その場から生まれることをうまくキャッチしながら、自由に広がっていくような時間をつくっていければと思います。なにかリクエストがあれば事前にいただくか、「最近気になっているテーマや本など。」という時間はほぼフリートークなので、当日来たときにリクエストいただいても大丈夫です。


 読書会だけでなくコンテンツ配信も週に1つのペースで行なってきました。これは読書会で話された話題や読書で得た知識を交えながら、身近なテーマにつながるように書いています。普段から読書をする人にとっては普段とは少し異なる視点として、あまり読書しない人にとっては本よりは短いコンテンツとして、読んでもらえればと思っています。なるべく客観性の高い理論や知見を紹介しつつ、しかし私なりの考えやテーマも乗せながら書いています。
 週1であげているコンテンツとは別に、さまざまな専門の先生に協力いただいて作っている短編本も、今年は1つだけですが『遊動する生』を作成しました。縄文の思想や世界観から、自由について考えてみたものです。人間あるいは個人が際立っている今の世界と、なにか大きなもののなかの一部であるという観念が強かったであろう縄文の世界とを比べながら、自由でいられる身の置き方とはどのようなものなのか考えてみたものです。これからも、ペースはゆっくりになるかもしれませんが作っていきたいと思っています。あえて、あまり馴染みのない領域に踏み込んでみて違う世界観にひたれるように、すこし変わったコンテンツとして作り重ねていきたいです。


 ところで、リベルとは何なのでしょうか。来年は、このような問いにも自分なりに取り掛かっていきたいと思っています。元々は、目的や目標のようなものに向き合い過ぎていると視野が狭くなっていくことに問題意識をもって始めたことです。発想や思考の幅が狭くなるだけではなく、「本当は何が大切なのか」といった価値観のようなものも狭くなっていくような気がしていました。生きていくうえで抱える問題がなくなる日が来るとは、今の私にはイメージできません。いつもどこか忙しさを抱えている。であるならば、自分や社会の忙しさから少し離れて、ただ読書をしたり、考えたり思いを巡らせたり、ただ話したり聴いたりする時間が、日常のなかにあった方がいいのではないかと考えています。
 今後も今のような雰囲気を変えていくつもりはありません。来たいときに来て、読みたい本を読んで、ただ話したり聴いたりして帰っていく。これは読書会でもコンテンツでも、同じような心持ちでやっていきたいと思っています。コンテンツで話したり聴いたりとは少しおかしなことですが、対話的なコンテンツをつくることができないかと、こちらも少しずつ進めていきたいと思っています。
 読書会に関しては、参加いただける人数が少しずつですが増えてきました。いろいろな人が興味関心にあわせて本を持ってきて読んで話す時間は、おもしろいです。一方で、人数が多ければいいというわけではありません。ゆっくりとした時間にするためには、1回の参加人数はせいぜい12,3人程度がいいところかなと思っています。しかし来たい人が来たい時に来られるように、というスタンスは変えたくない。これまで来ていた人も、そして新しく来る人も気兼ねなく来られるようにはしていたい。また、個人的な願望とも言えますが、リベルのようなものが今の社会には必要なのではないかと世間に投げかけて聞いてみたい、というのも正直あります。そうした、多過ぎない人数でのゆっくりとした時間が大切であるという価値観と、もっと広げるような働きをしていきたいという好奇心や役割意識が、矛盾しながら在るのが今の状態です。しかしきっと、矛盾のなかから何か新しいことが生まれるはずなので、それも楽しみにしながら。
 まずは今のままの雰囲気で続けていくことが第一だと思っています。そのためにも、リベルとは何なのだろうかということを整理していくことは必要であるように感じています。来年からまた少しずつ何かを変えていくこともあるかもしれませんが、もし何かが違うと感じるようなことがあれば遠慮なく言ってください。いろいろと書いてきましたが、変わらず来年以降もご参加いただければと思っています。

 それでは、今年もおつかれさまでした。来年もどうぞよろしくお願いします。


〈リンク集〉
■テーマのある読書会
・「いいライフスタイルについて考える」:読書感想 / まとめコンテンツ『自分を整わせるもの』
・「人の欲」:読書感想 / まとめコンテンツ『欲には歴史があった』
・「無意識」:読書感想 / まとめコンテンツ『周辺に広がる、中心には自分がいる。』
・「話すこと」:読書感想 / まとめコンテンツ『空気の振動に乗せてきたもの。』
・「価値観の色々」:読書感想 / まとめコンテンツ『「そうだったんだ」と知ることから。』
・「出合いたいもの」:読書感想

■これまでいただいた読書感想まとめ
読書感想

■短編本
『遊動する生 ーちょうどいい自由を探して』


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